【レビュー】『謎の香りはパン屋から』土屋うさぎ

 

――温かい香りに包まれる日常ミステリ

 

 

 2025年『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した、土屋うさぎさんの『謎の香りはパン屋から』(宝島社)。
 殺人も大事件もないけれど、パンの焼ける香りと人の温もりに包まれた“小さな謎”を解き明かす、優しい物語です。ぺんぎんも読んでいて、ついお腹がすいてしまいました。とくにクロワッサンがよく出てきます。さくさくのクロワッサン。

 


 

あらすじ(ネタバレなし)

 

 舞台は大阪府豊中市のパン屋〈ノスティモ〉。大学一年生の市倉小春は、そこでアルバイトをしています。
一見平和なお店の中で起こる、ちょっとした違和感や小さなトラブル――友人の不可解な行動、パティスリー部の先輩の不思議な苦手意識、カフェスペースで起きた高校生たちのケンカ、チョココロネ好きな可愛い常連さんの災難、思い出のカレーパンを探す老婦人。
 5つの小さな事件を通して、小春の推理と人とのつながりが描かれていきます。

 


 

読んだ感想

 

 まず感じたのは、空気がとにかくあたたかいこと。読んでいると本当にパンの香りが漂ってくるようで、ぺんぎんも近所のパン屋さんに走りたくなりました。それもそのはず、作者である土屋うさぎさんは実際にパン屋さんでのアルバイト経験があるそうです。
 ノスティモの店員さんをはじめ、登場する人々がみんな優しいところもポイント。引っかかる部分は、ちゃんとのちに回収されます。ぺんぎんは堂前店長のパン屋哲学(?)セリフに毎回「フフ…」となりました。
 謎や事件はどれも日常的なものですが、伏線の張り方がきちんとしていて「なるほど!」と気持ちよく回収されます。文章がやわらかく、頭の中で映像が自然に浮かんでくるのも魅力。
 特に最終話は胸がじんわりしました。これまで出てきた人たちが小春を助けてくれて、街で過ごした時間が実を結んでいく…ラストで温かいパンを手に取るような読後感が残ります。カレーパン食べたい。

 


 

作品の特徴

 

  • 日常の謎×人情ドラマ
    大きな犯罪は登場せず、ほっこり系のミステリ。
  • トリックの方向性
    人の隠していること、行動の矛盾を丁寧にひも解いていく。
  • 読みやすさ
    初心者向け。重厚な本格派を求める人には物足りないかもですが、ライトに楽しみたいなら大満足。
    ぺんぎん的には「優しい気持ちで謎を味わえる本」ってだけでごちそうです。

 


 

おすすめしたい人

 

  • ミステリ初心者さん
  • ほっこりした気持ちになりたい人
  • 「名探偵のままでいて」など日常系ミステリが好きな人

 


 

AudibleとKindle Unlimitedで楽しむ

 

Audible(2025/11/30配信開始!)
朗読で聴けば、パン屋の雰囲気や小春の声が耳に広がって、本を読むのとは違う没入感があります。通勤・通学中に“ながら聴き”したい方にぴったり。

 

📚 Kindle Unlimited
対象外ではありますが、活字でじっくり味わいたい方はKindleや紙の本で。読みやすさは保証します!

 

まとめ

 『謎の香りはパン屋から』は、“日常の謎”を楽しみたいライト層にぴったりの一冊でした。難しい推理や、知識を必要とする事件ではないため、提示された情報をもとに小春ちゃんが手を引いてくれるような感じで一緒に考えていけます。推理しながら読む楽しみ方の練習にもGOOD。もちろん推理せずに楽しむこともできます。
 大げさな仕掛けではなく、人の心の奥にある小さな矛盾をほどいていく。そんな優しい推理小説を、耳でも目でも味わえます。
 パンの香りと一緒に、ぺんぎんもおすすめします。

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